zokkon__U

音をたてて沼に落ちたド新規の日常(妄想)

BAD BOYS~ナンコーのヤンキー~

毎週火曜日、時間はだいたいいつも18時頃

イケメンさんは来てくれる。


そして…




「こんばんは、今日はこれにします。」

「ありがとうございます。いつものはいいんですか?」

「だってこれ、新作でしょ?」

「はい、そうなんです。
また、ご意見聞かせてくださいね?」

「出来るだけ早く伝えたいからさ、

ね?連絡先教えて。」


「…え?えー!!?!」





「…せん、すみません!」

「っは!失礼しました。お買い上げありがとうございました!」



あんな会話できたらいいなぁと思いながら、出来るはずもなく。

お兄さんが来るたび、頭の中で自分の都合のいいように妄想する日々。



「今日はあのタルトにしよ。」

お兄さんが買ってくれたものと同じものもらって帰ることにする。

それくらいがちょうどいいんだよ、きっと。

そう思い込ますためにも。





「あー!!宿題やってない…」

宿題?今日はなかったけど。って教えてくれる友だちに塾のねって返す。


しかも今日英語なんだよね…

見た目ほわっとしてて優しそうなのに厳しいんだよね、先生。



「ねぇねぇ!女子はどう思う?」

田中が聞いてくるけど、正直考えて答える時間がない。


「いいと思う。以上。」

「え!?○○ちゃん、酷くない!?」

「ごめんごめん、今時間ないんだよね。でも田中くんの意見いいと思うよ。文化委員さん、頑張ってよ。」





「なんでこうなったのかな。」


例の優しそうなのに厳しい先生に問われる。

「えっーとですね、ここにhaveがあるから仮定法過去に。」

「うんうん、なるほどね…
でもさ、文章読んでみて。『もし彼がアドバイスをくれなかったら、私は…』ほら。」

「あっnowがある。…現在の話だ!」

「うん。」




「先生ってなんで先生になろうと思ったんですか?」


「さぁね、忘れた。」

「でも教師になろうと思ったことはないんですよね。」

「あんな面倒なガキと親と加えて教師も相手にするなんて考えただけでもあり得ないね。」

「…私もその面倒なガキですけどね。」

「そうだね。」


そこは否定してよ!と内心思いながらまた取りかかる。



「先生、面倒なガキだからまた聞きますけど、彼女いないんですか?」

って聞くと、いつものように笑いながら首をかしげるだけだった。


この人は謎だ。

本当に、越岡先生は謎だ。





次の土曜日、その日はバイトの日だった。



今日は土曜ということもあって、閉店間際にお客さんが来て、帰るのが少し遅くなってしまった。

ドラマ間に合うかなって少しだけ急いでた。

地上に出る階段の前に人がいるけど、あそこをすり抜けなければ帰れない

すいません、すいませんと言いながら上がっていく。

最後の一段に足をかけようとしたとき、


「痛ッ!!」
「うわぁ!!」

大声で話していたグループのひとりが振り向いて、お兄さんの体が見事に私にヒットした。


片足で立っていた私がお兄さんとぶつかって、耐えれるはずもなく

重心が後ろに動いたのがわかった。


人間というものは、こういうときになぜか冷静になれる。

あぁ、この階段踊り場まで24段だったなとか。

意外と落ちるのって遅いんだな、って。



だが、いつまでたっても痛みはこない。

え?と思って、後ろを向くと、誰かが背中を支えてくれていた。

「大丈夫?怪我ない?」

うわぁ、このお兄さん眉がキリッとしてる、かっこいい…

じゃなくて!


「あっ、はい。」

「そ、ならよかったよかった!」




「おい。」

一瞬私に言われたんだと思って、全身に震えが走ったのがわかったほど、凄みを含んだ声。

どうやら後ろにいた人が注意してくれてるらしい。



「お前ら邪魔なんだよ。」


「…は!?ぶつかられたの俺!むしろ被害者!」


「あーぁ、始まっちゃった。

ごめんね、ちょっと待っててね」

ってさっきのお兄さんが、私の体をまっすぐに戻してくれながら言った。


「聞こえなかったのかよ、どけよ。」

「ってゆうかお前誰だよ!なんで俺が」

おい、こいつ俺なんか見覚えあんだけど。

って聞こえた声に、答えるように



「俺?俺は渡辺。

"ナンコー"の渡辺って言ったら、伝わる?」



え?ナンコー??


南高って言ったら、いわゆるヤンキー校。

嘘、私、ナンコーの人と関わってるの!?



「お前らのせいで人ひとり死んでたかも知れねぇんだよ。

わかったならどけ。

わかんねぇなら…」






「ちょっとやりすぎなんじゃないの?ひとり、忘れ物しちゃってるじゃん。笑」

って、置き去りにされたバックを拾いあげながら助けてくれたお兄さんがもうひとりの怖いお兄さんに向かって言う。


「知らねー

涼太、帰るぞー」


「はいはい。

あっ、君も気を付けて帰るんだよ。」

ってお兄さんが振り向いて言ってくれる。

「あ、あの!助けていただきありがとうございました!」



「いえいえ。

…ねえ、

なんか君美味しそうな匂いがする。」




「え!?!?」

「何言ってるんだよ、お前…」

渡辺さん?って人も呆れてる。



あっ、もしかして…

「もしかしてタルトの匂いですかね?」

「あっ!そうかも!いいなぁ…美味しそう。」


「あのよかったらどうぞ!お礼にもなりませんが…」


「え!いいの!ありがとう!!
でも君これ食べたくて買ったんだよね?」


「いや!私ここで働いてて、もらっただけですから気にしないで下さい!」

「え!?ほんとに!!ありがとう!」



涼太さんも南高なのかな?

これまでは怖いってイメージしかなかったけど、見ず知らずの私のこと助けてくれて人は見かけで判断しちゃダメだなって思った。

なんだかこの事は誰にも言いたくない秘密にしておきたくて、いつもならなんでも話すお母さんにも黙っておくことにした。


あと、渡辺さんって人にもちゃんとお礼したかったな。




そんな後悔もすぐなくなることになる。

「いらっしゃいませ。

…あ!」


「こんにちは、来ちゃった。」


涼太さんと渡辺さん。

「この前はありがとうございました。」

「いいってそれは。この前のタルトでチャラ。

それより今日は客として来たんだよ。この前の美味しかったから。」

「ありがとうございます!」


涼太さんは、名字が宮舘さんで、自分が甘党で趣味がカフェ巡りだということを教えてくれた。

「で、君の名前は?」

あれ?名札してなかったっけ?っと自分の胸元見ながら言う。

「○○(名字)ですけど。」

あれやっぱりちゃんと名札してるじゃん。


「じゃなくて、名前の方。」


「え!?な、名前…?」

そうというようににこにこしてる宮舘さん。


「…○○です。」


「○○ちゃん、また来るね。」


そう言って宮舘さんは帰っていった。

唖然としたまま見送ってたら、渡辺さんが振り返ったから、ありがとうございました!って頭を下げる。


なんとなくだけど、宮舘さんがスイーツ好きな王子で、渡辺さんがそれを呆れながらも付き合う宮舘さんのSPって感じだなぁと思った。



「あっ!今日火曜日だ!」

またイケメンに会えるなんて、最近の私はツイてる!


そんな風にしか考えてなかった。