zokkon__U

音をたてて沼に落ちたド新規の日常(妄想)

辰巳先輩


私には最近、楽しみなことがある。それは…


「あれ、○○ちゃんだ。おはよう。」

ひとつ上の辰巳先輩に会うことだ。

「おはようございます!先輩は朝練ですか?」

「そう!だからもう暑くて暑くて!」

そう言って、第2ボタンまで開けて、おまけに胸元つかんでパタパタする姿は眩しい程、かっこいい。

「でも朝練できるのももう少しだからさ。」

寂しいよねって言う先輩は本当にサッカーが好きみたいで。

「頑張って下さい!
じゃあ私、2つ上の階なんで先行きますね!」

階段を駆け上がって、先輩が見えなくなったところで、壁にもたれてさっきの事を思い出す。

今日も先輩と話せたよ~!!
わ~!わ~!!








先輩のことは、私が入学したときからすっごいかっこいい人だなぁって思ってた。でも、接点なんてなんにもなくて。


ある時、たまたま係りの仕事で、クラス全員分のノートを職員室に運んでて階段の踊り場に差し掛かったとき、人にぶつかった。


「うわぁ!」
「いってぇ。」


「すいません!よく前が見えてなくて。」

で、ノートの下敷きになって立ち上がれなくて。言い終わったあと、相手の顔を見たら、

た、辰巳先輩!!


「俺もすごい勢いで走ってたからごめんね?」

そう言ってノートを拾うのを手伝ってくれた。

「この量、ひとりで持ってたの?」

「はい、一緒の係の男子が見当たらなくて。」

「女の子にこんな重いもの持たせるなんてひどい男だな。」

そんなこと言ってくれるなんて…!
だってよ、森田!笑


「で、これどこに持ってくつもりだったの?方向からして、職員室でいいの?」

辰巳先輩はもう全員分のノートを持っていた。あんなに重かったのにこんなになんでもないように持てるんだなぁ…

いやいや!そうじゃなくて!!


「え!?いいですよ!私の仕事ですし!」

「いいから。で、どこ?」

「職員室です。」


そう言うと、先輩は本当に職員室の方に歩いていった。


「2年2組…諸星翔希。ってこれもろのじゃん!なんだ、もろのクラスメートだったんだ。」


先輩は一番上のノートの名前を読み上げた。

「もろの事知ってるんですか?」

「部活の後輩だからねー。
って自己紹介してなかったね、俺3年の辰巳雄大

君は?」


「あっ、えっと、2年2組○○○○です。」

絶対クラスと下の名前は要らなかったのに、緊張しすぎて言ってしまった。

「オッケ、○○ちゃんね。

もろと仲良くしてやって。そうそう!あいつ勉強できないからさ、教えてやってよ。笑」


「あ、あの!ありがとうございました!」

そう言うと、先輩は手をひらひら振りながら帰っていった。

先輩に下の名前で呼ばれた…嘘。
どうしよ私…!!



教室に戻ると案の定森田が慌てた顔をしてこっちに来た。

「ごめん!」

いつも怒るからか結構必死に謝ってくれてるけど、今日は私全然怒ってないけどなぁ。

「全然いいよ!むしろ、仕事忘れてくれてありがとう!」

「…はぁ?めっちゃ怖いんだけど。」




それからだいぶ後、そんな出来事も忘れかけてた頃、朝下駄箱のところで財布を拾った。

職員室…だけど今、職員会議中だから行きたくない…財布だからすぐ手元に戻りたいよね…。


財布のポケットから何か角が出ていてちょっと出して見るとそれは生徒手帳だった。

「嘘っ」

って、辰巳先輩じゃん!

一緒にいた友だちについてきてもらって、辰巳先輩のクラスまで行く。


「…いややっぱ無理だって。先輩覚えてないよ…。」

ここまで来て、なに言ってんのって言う友だちには悪いけど、戻ろうとしたとき、

「おはよー」

って前のドアから入ってくる先輩が見えた。

でも私はずっと動けないまま。
そしたら先輩と目が合って、

「どうした?…って確か君話したことあるよね??」

「あっはい、あのときはありがとうございました。」

「たいしたことしてないよ、でどうしたの?」

「あのこれ拾って…辰巳先輩のですよね?」

先輩の前に出すと、急に慌て出す先輩。

「え!?嘘、俺なくしてたことすら気づいてなかった!ありがとう!
でもなんで俺のってわかったの?」

「えっと…ごめんなさい!
ここのポケットから生徒手帳がちょっと見えてて…拝見させていただきました。」


「へぇ、中、見たの?」

急に声のトーンが変わり、ピリッとした空気になった。そりゃ勝手に中身見るなんて非常識なやつだと思われるよね。


「ほんとにごめんなさい!生徒手帳の中見ました!先輩の顔写真、かっこいいなぁとか思いました!ごめんなさい!!」


「え??笑

財布の中身の話なんだけど。笑」


「え、嘘…。」

「君、面白いね。俺の写真がかっこいいって?ありがとう、そんなこと言ってくれて。笑」


○○、そろそろ戻らないとヤバい。

そう友だちが言うと、

「そうだ!○○ちゃんだ!思い出した!もろの事、よろしくね~。」

「あ、はい。」

「財布もありがとう。助かったよ。」



「またね、○○ちゃん。」


またねって言われて浮かれてた私。

なんでってあのとき気づかなかったんだろう。

あとから来た私が下駄箱で先輩の財布を拾ったのに、なんで先輩の方が教室にあとから来たのか。


そしたら、こんなに悩むこともなかったのに。