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音をたてて沼に落ちたド新規の日常(妄想)

番外編~越岡くん

「こんなとこでこんなことされてるなんて、口が裂けても言えないね。」



この場に及んで何言ってるんだが。言ってることとやってること矛盾しすぎでしょ。
こーんなになっちゃって。


「もう少し、声抑えないと聞こえちゃいますよ。

せんせ?」





保健室の鍵を開けて廊下に出ると、授業中で誰もいないはずなのに、女の子がひとり。

この反応からして、だいぶ前からここにいた様子。

どうしようかと思ったけど、俺に擦り寄ってくる女とは違い、いかにも純粋なお嬢さんって感じだから、
しーっ。って唇に人差し指つけてジャスチャーすると、ますます赤くなる彼女の頬。


こんな女の子もまだいるんだなと思いながら、教室に戻る。




「あっ、こっしー帰ってきた。」


次、美術だよーって辰巳が声かけてくれる。

「行かないとかなしだからね!

俺ら選択なのに勝手にこっしーに美術にされてたんだからさ。」


美術のあの女は単純そうだなと思って、問答無用で3人も美術にしたんだった。

まあ、結果本当にただ1つのことしかできない単純すぎる女だったけど。

え?俺は何者だって?

そう、俺はそういう男。




「おかえりなさい、裕貴さん。」

「…」

「今日ご飯は?」

「食べてきました。」

「そ、う。
…じゃ、お風呂は」

「すみません、後で勝手に入るんで。」


なんでこんなにもお節介なんだろう。

いっそほっといてくれれば、なんとかできたかもしれないのに



なんでこんなに女はいるのに

よりによって、好きになっちゃいけない女性(ヒト)なんだろ。




俺が中学のとき、母親が他界した。

だからと言って、よくある父親を恨むとかそんなことはなかった。

父は仕事が忙しいながらも、母のことを大事にしていたし、母もそんな仕事をしている父を尊敬していた。


ただ、それから父の仕事が忙しくなったのか俺がひとりで過ごす時間は増えたわけで。

つまらない

はじめはそんな理由だった。



都合のいいときにだけ抱く。

誰にも縛られたくないマイペースな俺にはピッタリだった。


でもほんとはそう思いたかっただけかもしれない。



そんな高1の秋、珍しく父が食事に行こうと誘ってきた。

よくわからないが、店に行ってみると父のとなりには女の人がいた。

品が高そうな女性。
俺が来たとわかった瞬間、さっきまでの態度はどこへやらドキマギし始めたその人のことを、父はやっぱり新しくおかあさんになるヒトだと言った。


母が亡くなって3年。

いくらお手伝いさんが来てくれるとはいえ、今まで全く家のことなんかしたことなかった父がやっていくのは大変だったろう。

ちょっと若いのが気になったけど、いい人なんじゃないの?そんな印象だった。



「裕貴さん。」

あの人は俺のことをそう呼んだ。

年は俺の10コ上なだけらしくって、昨今年の差婚が世間を騒がしているがこれも例外ではないなと感じた。


新しくこの家に人が増えたからって、今までのルーティーンを変えようとは思ってなかった俺には、この人はすんなり馴染んできた。

これまでみたいに夜遅く帰っても待っててくれたし、せっかく作った食事いらないって言っても、少し寂しそうにそうって言うだけで責めてきたりはしなかった。

つまり干渉は全くされなかったってこと。

干渉してくる人は、男であっても女であっても嫌いだ。
家族であっても所詮他人の人生、好きなように生きさせてほしい。




そんな生活をしてたある日帰ると、いつもみたいにあの人は出てこなくて。
リビングまで行くと椅子に座ったまま寝てるあの人がいた。


父はもう食事は済ませたみたいだ。俺の分しかなかったから。

だったらこんなことしなくてもいいのに。
旦那でも自分が腹痛めて産んだ子でもないんだから。


ブランケットを取りに行って、掛ける。


可哀想に。
まあ、俺がそうさせてるんだけど。

初めてこの時、この人もこんなにも弱い女の人なんだって。


手に入れたいと思い始めたのは。




それでもまあ、すぐに辞められないのが思春期の男というもので。


その日も高校生にしたら結構遅い時間に帰ったんだと思う。

あの人はいなくて。

今日はもう寝たのかななんて思ってたのに。

声が聞こえた、あの人の鳴き声が。


そりゃそうだよな、新婚だもんな。と思う反面、ふつふつと何か込み上げてくるものもあって、急いでバスルームに飛び込んでシャワーを頭から浴びた。

何分そうしていたかわからない。でもそんな長い時間そうしてたはずなのに、さっきほんの少しだけ聞いただけのあの人の声が頭から離れなかった。


今まで何人も女抱いてきたのに。

誰もあの人には敵わない。

そして俺も。



約千年前、同じようなヒトを好きになった男がいた。その男は周りの障害も飛び越えて、愛するヒトに自分の子を身ごもらした。

そんなアホな。と馬鹿にしてた俺がまさか同じようなことしようとしてる。




俺が現代の光源氏

なんてね。