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音をたてて沼に落ちたド新規の日常(妄想)

番外編~福田くん

高校3年の夏、制服で過ごす最後の夏。俺はいつものメンバーでめちゃくちゃ思い出作ろうと思ってた。

なのに!!!



辰巳とマツは、夏休み明けすぐにある大学のAO入試の勉強とか今からやっても間に合わねぇよとしか思えない方を取った。

結果、俺の高校生活最後の夏休みはほぼほぼ家で過ごすというとてもつまらない1ヶ月半になるらしい。


俺らは3年間ずっと一緒だった。
1年の時、同じクラスですぐ仲良くなって。
2年でも一緒だった時は運命だ~なんて思った。

でも3年でも一緒で、さすがにおかしいと思った。10クラスもあるのに、こうも同じなんて。なんでだと思うってこっしーに聞いたら、さらっと言われたんだ。

「あぁ、だって俺があの女に言っといたから。」

あの女?って思ったけど、たしか俺らの学年主任って女じゃなかったけっけ?とか思ったら、合点がいった。

こっしーはあんなかわいい顔して、やることがゲスいことが多々ある。
この時、確信した。



夏休み前、最後の授業、前の席のマツはその前の席の辰巳と問題集見ながら、わかんねえ!わかんねえ!って言って、しまいには二人して抱き合って慰めあってる。

後ろの席のこっしーはいつものごとく寝てるし、俺は筆箱の中のあらゆるペンを取りだし、遊んでいた。

「お前ら、俺の話を聞け!!」

辰巳とマツ、また怒られてやんの。とか思いながら没頭する。すると、俺の机に誰か近づいてきてその振動で、積まれていたペンが崩れた。

「あーあ、誰だよ…ちぇ。」

「ちぇ。じゃねえよ。ほんま、お前は高校生にもなって…なにやってるんだよ…!」

あ~ぁ、また始めっから積み直しだよ~。

「そんなことより福田ぁ!お前この前のテストの結果、あれどういうつもりだよ!!」

心底あきれた顔からみるみる怒りを露にした光一くんがいた。

「たまたまですって。」

「嘘つけー!!」

「だって光一くんの」

「光一くんで呼ぶなー!」

「じゃあ光ちゃんの」

「なんでそうなる!!」


後ろの席からこっしーのうるさいよという声が聞こえた。

「先生!越岡くんが先生のことうるさいって言ってます!」

「いや、絶対お前にやから!!」

「先生!越岡くんが寝始めましたよ」

「…まあ、越岡はいいわ。」

「わっ、えこひいきだ!!」

「越岡はもう大学決まってるし、テストでもちゃんと点取ってるからだよ!それよりお前そんなこと言ってっと、ほんとに単位やらねえぞ!今でこそギリギリなのによー!!」

「そこをなんとかお願いしますよ~僕と先生の仲じゃないですか~」

「気持ち悪ッ!!」




「でもほんまに単位出せるか微妙やから。補習ちゃんと来いよ。」


チャイムが鳴ったあと、真面目な顔して光一くんが言った。
まあどうせすることないし、学校来たら辰巳かマツはいるかも知れねえし、行こうかなって思った。


俺はほんとに補習に行った。
初日ちゃんと机に座る俺を見て光一くんが安心したような顔をした。俺だってちゃんとやるって。


でもその補習も1週間で終わり俺はほんとに暇になった。
朝起きてご飯は食べるんだけど、何しようってなる。とりあえず縁側に扇風機持ってきてマンガ読んだりしてたけど、面白くない。
で、寝るの繰り返し。


「悠太…悠太!」

母ちゃんの声に起こされる。

「あんた暇でしょ?これお願い。」

はぁ!?って思いながらもまあ散歩がてらとおつかいを頼まれることにした。もう5時だっていうのにあっついな~まあ夏だもんな。と一人納得し、それでも今日はやっぱりあっついなと思った。


「あっ」
「あっ」

「久しぶりだね、悠太くん。」

商店街の八百屋の前、つまらなさそうに店番をしてる彼女と目があった。

「店の手伝い?精が出ますな~」

「そんなんじゃないよ、家にいたってすることないからさせられてんの。」

「勉強は?ってか大学行くんでしょ?」

確か彼女はこの辺りでも1番の進学校だったはずだ。


「…行かない…かなぁ…」

「えっ?」

「いや!だって私一人娘だしここ継がなきゃだし。それにあんまり勉強好きじゃないし。…ね?」

悲しそうな顔を一瞬したかと思えば、無理に笑ったような顔で言った。


「悠太くんは?」

「俺は…」

なんとなく彼女の前でそういうことにてきとーに生きてるってこと言えなくて、内緒って答えた。

「なにそれ。笑

それより今日はなに買いに来たの?」

そうだそうだと本来の目的を思い出し、とうもろこしを買う。親父と兄貴がこれで飲むとうまいんだよな~って言ってるのを思い出して、俺も早く堂々とこいつつまみで飲みたいな~と思った。

「ありがとう。また来てね。」

たぶんじゃなくて絶対客には誰でも言ってるんだろうけど、彼女のまた来てねに懐かしさを感じた。





「あっつい~」

相変わらず縁側で扇風機生活をしている8月上旬。


久々にスマホがブーと鳴った。


ゆーだい
>明日の花火大会、行くよねー?


明日はどうやら花火大会だそうだ。


「もちろん。っと」

俺が打ってる間に新たなメッセージが届く。


ゆうき
>何時集合?


こっしーの中ではみんな行く前提なんだ

ってかこっしー打つの早いよ。フリック入力の申し子かよ。



やっと俺のメッセージが福ちゃんと書かれた文字の下にある枠の中に表示される。

一瞬で既読が2つく。



ゆーだい
>福ちゃん、遅いよ!笑


ゆうき
>おそ。


連続で来る。笑




ゆーだい
>てかマツは?笑


ゆうき
>マーツー


それでも既読は2のままで、


ゆーだい
>じゃあ、6時に駅前でいい?


ゆうき
>了解。


今度こそ負けたくなかったのに、俺のはーいというメッセージはやっぱりこっしーより上には表示されなかった。




ザキ☆
>Hey!ZAKIさんだよ!



こんなメッセージが届いてスマホが震えたのは、このやり取りから2時間が経った頃だった。




この日も母ちゃんに頼まれておつかいに行く。
あれから2、3度頼まれて行っていた。

今日もいつものように彼女いるんだろな、なに話そっかな~って思ってたのにその日彼女はいなかった。



あーら、福田くん!はじめ誰かわからなかったわよ~。って彼女のお母さんが言ってくれたけど、そんなのそんなに聞いてなかった。

店の奥からしれっと彼女出てくるんじゃないかなってずっと気にしてたから。






「おまたせ~!」

駅前に行くと、すでに3人はもう来ていた。

まずはなんか食おーぜ!って焼きそばやらイカ焼きやら書かれた文字に吸い寄せられるように進んでいく。


辰巳がみんな焼きそば要るでしょ?って、みんなの分まとめて頼んでくれた。

こっしーとマツはもっと奥までなにか食べ物探しにいったみたいだ。


俺はちょうど出店と出店の間、人が少しだけ減ってるところで3人を待つことにした。


にしても多いな~場所空いてるかな。ってまわりを見渡してみる。


そういや、彼女は来てるのかな?やっぱり家の手伝いで忙しいのかな?って少し考えた。



その時、浴衣のお姉さんがちょうど前を通りすぎて、うわぁうなじちょータイプってガン見してたら、そのお姉さんがこっちに振り向いた。


「あっ」

「あっ」


浴衣姿の彼女は俺の知ってる中学の制服着た彼女でも八百屋でつまらなさそうに店番してる彼女でもなくて、なんというかもう大人の女の人で。


なんだろ、運命ってやつがもしあるのならば、これが俗にいうビビッときたってやつなのかもしれないと思った。