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音をたてて沼に落ちたド新規の日常(妄想)

番外編~辰巳くん③

「おっはよ~!!」

今日は朝からとても元気な福ちゃんに少し違和感を抱いたが、

「あっ!誕生日!!」

「そうなんだよ~!俺、辰巳より年上だから。」

「んなこといったって、10日だけじゃん!」

「あっはっはー!」

って饒舌な福ちゃんに、プレゼント忘れてごめん!と謝って、教室に入る。
こちらは朝から晩までいつも元気なマツに迎えられる。


「福ちゃん、誕生日おめでとう!!って辰巳一緒だったんだ、珍しいね?」


そう。今日、昨日のこともあったしいつもより少し早く迎えに行ったらいなかったから待ってたのに、もう出たって言われた。

なんなんだよ。サプライズじゃなくたってあんなに怒るものなの?どっちかって言うと、亮子は気に入らないところがあっても結局は許してくれるタイプだったから、めちゃくちゃ驚いた。あんなに?屋良くんのこと兄貴って呼ぶくらい。


「今日、あの子はどうしたの?」

こっしーが聞いてきた。こっしーはこう見えて(いつもだいたいぼーとしてるか寝てる)めちゃくちゃ回りのこと見ている。


「昨日、デートだったんでしょ?」

あっそうじゃん。どうだったんだよ~って福ちゃんもマツも聞いてくる。

「いや、デートじゃない!…とも言えないかも…
だってさ今思えば昨日さ!」

と、行ったところを包み隠さず全部打ち明ける。

「でさ、ベタだけど海連れてったんだよ、俺好きだから。そしたら寒そうだったから上着掛けてあげて。」

「「ふぅ~!!」」

めっちゃにやにやしてるふたりを見ると続けて続けて!って顔してる。

「それで帰って、屋良くんにあってそしたらなんか怒って帰った。」

「「怒って帰った??」」



「なんか怒られる要素ある?もしかして俺の服かけたの嫌だったのか!?彼氏でもないやつにされてもしかしてそれを好きなやつに見られてた!?でも、あのときいたのって屋良くんだけ…えっ亮子屋良くんが好きなの!?!?」

「ちょっと雄大、落ち着けよ」


こっしーになだめられる。




「俺が言うのもなんだけど、雄大って相当バカだね。」




「バカかぁ」


亮子にもめっちゃ言われたな。部活中思い出す。

雄大先輩、どうしたんですか~?って最近いろんな子に聞かれるけど、俺そんなにバカなのかな…。

サッカー部のメンツにも帰っていいぞとか言われるし、なんなの俺。



あれから毎日部活終わりには一応亮子の教室まで行ったけど、いるはずもなくて。
朝はまだ大丈夫だと思った。明るいし。
でも夕方はさすがに心配だ。この際しょうがないから、ファンクラブの特権使おうかな…なんて思いながらチャリ乗ってもうすぐ家ってところで家の前に誰かいるのを見つけた。

ブレーキをかけたら、キキーって音がして、この自転車ももうだいぶ年取ったなぁって感じた。

「屋良くん。」

よっ!と手をあげる屋良くんが無理やり笑った。ような気がした。


言っておきたいことがある。そう言って、屋良くんの家まで連れてこられた。亮子はまだ帰ってないらしい。

「本当は亮子が卒業したらって思ってたんだけど、もう16になったじゃん?」
知らなかったんだけど、女は16で結婚できるって聞いたからさ。

はじめは??って感じで聞いてたけど、後半は、屋良くん、どんまいっすって思った。

「俺は、亮子の婿には、雄大お前しかいないと思ってる。冗談なんかじゃない。俺は本気だ。」

「…はぁ??」

はじめは何を言っているのかわからなかった。理解ができたとき、無意識にそんな声が出ていた。


「俺が昔、お前に言ったこと覚えてるか?変な虫つけたらただじゃ済まさねぇってやつ。

俺は何もいじわるで言ったんじゃない。お前のこと見込んで、言ったんだ。でもな、」



俺、今もしろなんて。
ずっとそうしろなんて、一言も言ってないぞ?



え?じゃあ俺はなんでいつも亮子のこと考えて、心配して、守ってたんだ?

…いや、まさかな。


「でも、それじゃ、亮子の気持ちは??大事な妹なのにその気持ち踏みにじるんですか。」






「…これは言うつもりなかったんだけど。」

屋良くんが珍しくバツが悪そうに後頭部を掻きながら言った。




「あの日、泣いてたんだよ。」






なにやってるんだよ!俺!!

屋良くんから今日は秋山ちゃんと駅前のカラオケって聞いてもうだいぶいい歳の
自転車をぶっ飛ばす。

もうすぐ着くってところで見つけた。

「亮子!!」

そう叫ぶと、道の反対側にいた亮子はなんでか家とは反対方向に走って行く。

なんで逃げるんだよ!

やっと捕まえたのに、いつもの亮子らしくなくまた逃げようとしてたから、

腕引き寄せて言う

「お願いだから逃げんなよ。」


やっと大人しくなった亮子。

「あの日、泣いてたんだろ…?」

「なんで…?」

「屋良くんに聞いた。ごめんな、たぶん俺が悪かったんだよな。」

「…バカ兄貴。」





「…雄くんが中学卒業してからいじめられるようになった。」


家の近くの公園まで帰ってきたとき、何か覚悟を決めたように亮子は話始めた。

俺はただ、聞くことしか出来なかった。


「いろんな人に告白されるし、雄くんに守ってもらっていい気になってるんでしょって。でも守ってもらってるのはともくんが言いつけたからでしょ、義務だよあんなのって言われた。

で、その頃帰り道で雄くん見たんだ。メイクばっちり、髪もカラーもパーマもしてる女の人と一緒に笑ってた。こんな人だったら、雄くん私のこと義務で守らなきゃならないとか思わないのかな、恋愛対象として見てくれるのかなって思って、高校生になったら変わろうって思ったんだ。」



「私の中では完璧な高校生だった。あの見た目のおかげでいじめられないし。
…そりゃともくんは1週間まともに食事してなかったけど、今ではすっかり慣れたみたいでもうなんともないし。」

1週間落ち込んでた屋良くんを思ったらただただ不憫でしかなかった。


「でも、雄くんはちっとも私のこと恋愛対象で見てくれたことなかった。
いつまで経っても妹みたいな目でしか見てくれなかった。
なのに、校内では女の子にキャーキャー言われてデレデレしてて。
なんでって、悔しかったの。」


「あの日だって、やっとともくんのことなしで雄くんが私のこと見てくれたって思ったのに。結局ともくんの言いつけだったんだってわかったら、頑張って雄くんの隣に立っても恥ずかしくないようにとかおしゃれした自分とか期待した気持ちとか全部がバカみたいに思えた。」


「ごめんね?いつまで経っても子どもで。好きになっ」



「いつまで経っても子どもだったのは、俺の方だ。」


亮子の言葉を遮るように言うと、ビックリしたようにこっちを向く。


「なんで気づかなかったんだろうな、この思いが特別だってことにさ。」


「まださ、これが恋だとか愛だとかわかんねぇ。」


「でも亮子は俺にとって、妹みたいな存在じゃない。守ってあげたい女の子だ。」


「…嘘…」

「ごめん。嘘じゃねぇよ。」



「…好きだ。
俺のそばにいないと不安になるんだよ。」


「雄くんの…バカぁ…」

すっかり泣いてしまった亮子が、俺の胸を叩いてくる。その手を握って俺の胸に引き寄せる。


「でもごめん、俺まだ16だから。俺が責任とれる歳になるまで待っててほしい。必ず、迎えに行くから。」

屋良くんがいる手前って言ったら、亮子は、黙って頷いたあと

「…じゃああと1年と1日だね。」

って言った。


「え、もしかして今日って…」

「バカだね雄くん。誕生日明日だよ。」

おめでとう、雄くんってくっついてくる亮子が…




熱い。




「ねぇ、雄くん。熱くない?

え!?絶対熱あるよ!なにしてんの!?」


あっ、もしかしてあの日雨に降られて帰ったから?
ここんとこしんどいと思ってたんだよなぁ…ってボーとした頭で思う。


亮子に額に手を当てられてひんやりしてて気持ちよくて、思わず亮子の手首つかんでこのままでいてなんて言う。

「は!?雄くん!帰るよ!!」

そう言って亮子は俺から自転車を奪ってずんずん歩いていく。

さっきまでの甘い空気から一転、何を言っても「何やってるの!帰るよ!」って怒られて…




「せっかくの誕生日なのに一緒に学校いけないじゃん。」


あっ、いい。

俺好きだ、亮子のこういうとこ。


たぶん俺しか知らない亮子の素直なところ。



「雄くん!」

「はい。」

「2日あげる!
2日後、誕生日祝ってあげるから。

それまでに治さなかったら、許さないから。」


たぶんこれからずっと俺は、このお嬢ちゃんの尻に敷かれ続けるんだろうな。



!!?!

待って俺、亮子と結婚したら、屋良くんお義兄さんになるの!?

え~!!

ついでに屋良くんに1発殴らせろとか言われる未来がみえたけど、あれもこれも運命だと思って、まとめて引き受けてやってやるよ。



愛してるよ。

なんて、たぶん一生で1回くらいしか言えないけど、亮子のこと守りぬいてみせる自信だけは、誰よりもあるんだから。



~終わり~