zokkon__U

音をたてて沼に落ちたド新規の日常(妄想)

辰巳先輩④

2学期

私は夏休みとは別人のような日々を過ごしていた。


「○○ちゃん、これは?」

「それは、奥に立て掛けといて!」



「文化委員さん、張り切ってますね。」

「まあね。笑」


そんなことを同じ文化委員の田中くんと言い合う。

文化祭まであと少し。



「3年のどっかのクラス、メイド喫茶とイケメン喫茶だってー!かっこいい先輩のいるクラスだったらいいな~!」


はいはいはい、知ってます。だって私文化委員だもの。
ちゃんとかっこいい先輩いるクラスですよーなんてったって、あの辰巳先輩がいるんですから!

「なんて顔してるの…笑」

そんなことを言われてしまうくらい内心ニヤニヤしてた私。(思いっきり顔に出てたみたいだけど。)

そんなこと言えるくらい辰巳先輩のことは整理できてきたはず、

なのに

こんな噂話ひとつで私は揺らぐ。



「ねぇ聞いた?音楽の先生、辞めちゃうんだって。」


は…?

ダメだダメだ。今の私には関係のない話。


「理由はわかんないけど、辞めさせられるのかな~?」


「…ちゃん!○○ちゃん!!」

「っ!ごめんごめん!」

「大丈夫?疲れてるんじゃない?」

「…まあそこそこにはね…」

「でも休ませてる暇ないからね。」

「田中くん、そこは女子なんだから休んでな。だから。
だから、彼女いないんだよ~!」

「今それ関係なくない!?」






「へぇーそんなことがあったんだ…」

「うん。あっ、ただいま…」



「せーの…!」


「「おつかれぃ~!!」」


「は!?なになに!?悠太くんまで!?」


「…もしかして誕生日祝い?」

そう言った孝良に、そうでーす!ともうすでに酔っているような声の悠太くんが答えた。


孝良の誕生日と私の誕生日は近い。1週間くらいしか変わらない。
(ちなみにうちの兄と悠太くんも1ヶ月くらいしか変わらない)



「おかしいと思ったんだよ!一緒に来いだなんてさ。」

そうだ、今日は何故か孝良に一緒に帰らなきゃいけないって言われて。



「俺は当日ちゃんと来てあげるからね~」

「…え!ありがとう、悠太くん!」


「お、俺だって、出張じゃなかったら誰よりも祝えたのに…!」


兄と悠太くんが言い合ってる。まあこの二人は仲がいい。ケンカしてるのを知らないくらい。


「めっずらしー、○○が食べ物を興味ないなんて。」

「うっさい、孝良!他に考えることくらいあるんですー!私、忙しいんですー!!」


「それはそれは、文化委員様。」


「あんた絶対文化委員バカにしてるでしょ!めっちゃ忙しいんだからね!」



「またまた~痴話喧嘩しちゃって~♪見せつけてくれるよな~」

「「は!?」」

完全に呑むスイッチが入った悠太くんはなかなかめんどくさい。
だって、こんな訳わからないことまで言い出すんだから。


「…え!?ふたりってそういうことなの!?な、なんで今まで言ってくれなかったの!?」

「だから違うから」

「完全に誤解です」

それでも、完全に誤解してるお兄に言い聞かせようと声をあげると


「「付き合ってないから!!」」


見事に孝良の声と被る。

孝良と顔を見合わす。

こうも揃うと、もうどうにもできない。


「見せつけてくれるよな~ハッハッハッー!」

「嘘だろ、○○…」





「最悪だ…」

「大丈夫だって、兄ちゃん明日にはなんにも覚えてないから。」

「いや、あんたんとこはいいかもだけど、うちのはどうすんのよ!」


悠太くんが呑め呑め~って勧めるのに、全く呑む気も起こってないお兄を見る。


「まあ、なんとかなるっしょ!」


そうだった…こいつは、悠太くん同様ものすごいお気楽なやつだった…




「だって、そう思わなきゃ前に進めないじゃん?」


「え?」

声色が変わった気がして思わず顔をあげる。

そしたら、さっきとは表情の違う孝良がいて、ちょっと緊張する。

こんな顔されるのは、いつだっていい話の時じゃないから。

孝良はたぶん全部知っている。私が辰巳先輩が好きなことも、辰巳先輩に好きな人がいることも。

その好きな人が絶対手の届かない人だってことも。


「…らしくねぇな俺!」

「うん。」







「○○先生、辞めるんだってさ。」





「うん…。」





はっはっ!マツバカなんじゃねーの!!

悠太くんのそんな笑い声もどうでもいいくらい、胸に刺さった。

BAD BOYS〜ナンコーのヤンキー〜③

「じゃーねー」

「じゃーね。バイトファイト~」


あれから、1ヶ月がたった。

夏休みも終わり、2学期が始まった。


親友と別れ、バイト先に向かうために駅の方へ向かっていると、


「…なにやってるんですか、宮舘さん。」


「あっ!久しぶりだね、○○ちゃん!」


ちょっと、通りかかったからさ~ってバレバレな嘘をつく宮舘さんがいた。


「学校反対ですよね?」

「…そうだよ」

「で、何しに来たんですか?」



「なにもない?」


「はい?」


「まわりでおかしなこととかない?」



「突然どうしたんですか?

あっ、あれですか?何か不審者とか出たんですか?だから、心配して。

…そんなことないですよね。」


「…」


「え?」



「俺たちさ、これから会えなくなるかも。」



「…え?どういうことですか!?」

単純に宮舘さんが言ってる意味がわからなくて聞き返す。


「○○ちゃん、時間ある?」


「今からバイトなんで」


「じゃあ終わるの待ってる。」



私が言い終わる前に重ねて言ってきて、なんだか有無を言わさない宮舘さん。こんな宮舘さんを私は知らなくて…。




「お疲れさま。」

そう言ってコーヒーの缶を手渡してくれる。

そんな紳士な宮舘さんは普段と変わりなくてホッとするのだけど。


「ありがとうございます。
…今日宮舘さんひとりですか?渡辺さんいないの珍しいですよね。」


空気が変わった。
鈍感な私でもわかる。これは触れちゃダメなやつなんだ。


「…うん。あのね、○○ちゃん!」


♪~~~


宮舘さんのスマホが音を立てる。



「どうぞ?」



普段なら後でかけ直すからって出ないタイプなのに…


「ごめんね?」


そう言って宮舘さんは焦ったように電話に出た。


なんだか一緒にいるのは、宮舘さんなのに…

全然知らない人みたいで、なんだか怖かった。



ごめん急ぎの用が出来たからって、半ば強引に交換させられた連絡先。

「宮舘さん、どうしたの…?」


「ごめんね。」


宮舘さんは何度もそれしか言ってくれなかった。






「涼太どこ行ってたんだよ。」


「ごめんごめん、でも俺いなくても終わってるじゃん。」


「まあな。で、どこ行ってたんだよ。」


「…実は…

となり街の駅前に新しく開店したカフェのシフォンケーキを食べに…」


「はぁ?」

「それがさ、すごい並ばなくちゃ食べれなくて、ごめんね?」


「おい、涼太。嘘つくなよ。」



「はぁ…。だってほんとのこと言ったら、翔太きっと怒るでしょ。だから、言えない。」


「りょ『おい、やべーぞ!!』





西高のトップが動き出した












「こんばんは、ちょっと覗きに来ちゃいました。」

そう言ってお店に来てくれたのは、いつもなら宮舘さんしかいないけど、今日は違うくて

「え?林さん?」


親友に林さんのことを聞いた日から気にはなってて、そうしたらタイミングよく先週店閉めるときに話しかけられて、今度開いてる時に行きますね?って言われて。

その時は社交辞令だと思っていたけど、ほんとだったなんて…。



「あーら、林さんとこの息子さん!」

ちょうどそこに奥さんが出てきた。
…嫌な予感。

「こんばんは、お邪魔してます。」


「○○ちゃん、今度の彼氏もイケメンねぇ〜!」

「違いますって!!」

「お聞きした感じ前の彼氏もお知り合いなんですか??」

「林さんものらなくていいです!!!」

「そうよ〜これぞ日本男児って感じのイケメン!確か、宮だ」

「だぁーー!!違います!」

「もう、照れちゃって!彼氏の1人や2人いるわよね〜!」


ここで、林さんは変なこと思ってないかな!?って思い、林さんの方を向くと、林さんはニコニコ笑ってた。

「僕も会ってみたいなぁ」

なんて言いながら。








帰り道、スマホが通知を知らせる。

宮舘さんだ。

『明日会えないかな?』


あの話、だよね…??


既読をつけて、はい。大丈夫


「です。っと

っわぁ!ごっ、ごめんなさい!」


ながらスマホしていたから、人にぶつかってしまった。この辺はほとんど人がいないから大丈夫だと思っていたけど、気をつけないと…。

相手の人は、ぶつかった拍子にこちらに体重がかかってるみたいで、なかなか離れてくれない。


待って…この匂い知ってる。



「渡辺さん…!?」



「待ってた。」


でも


「ちょ、この姿何が」






「あんたを待ってた。」



こんな渡辺さんを私は知らない。

せいせいするほど愛してるをふぉ~ゆ~でやってみた。

7月から始まり、ついに昨日最終回を迎えた
ドラマ「せいせいするほど愛してる」


武井咲ちゃんとタッキーの大人ラブストーリーで、初回ではタッキーこと副社長が自宅で急にエアギターをしだすのが話題になりましたね。


私もはじめは普通に見ていたんです。ほんとフツーに。

でもある日突然、
あれ?これふぉゆじゃね?と…


とまあ、とりあえず人物紹介に行きましょう!



まずは、

三好海里(滝沢秀明さん)/越岡裕貴


これはもうなんか…副社長ぽいなぁっていう理由です。笑

あとなんか、海里は建築士諦めてティファニーの社長になったんですけど、越岡さんもなんか諦めて親の跡継いでそうな感じしません?


2話で仮装パーティーで無理やり着させられるシーンがあったんですけど、なんか越岡さん似合いそうだな~

「ぎゃー!!!!」

とか言ってそうだなぁってことで、副社長は越岡さんです。



次、

久野淳志(中村隼人さん)/辰巳雄大


これはもう色気だけで決めました。笑

初回で、久野さんは猛烈にアタックするんです。でも初回のラストにはその友人と関係を持ってるふうな描写で終わるんですけど、

まあこの男

遊んでるんです!!!!!

しかも相手が一緒の家に住んでる友だちって、どうだと思います??

それでも好きになっていっちゃう真面目な女の子。

そんな色々おかしいけど、魅力的な人演じられるのはもうこの人しかいない!ってことになりました。

あとは、トレーダー兼小説家っていう職業ですかね…辰巳くん物書きのイメージがぴったりで、しかもトレーダー!頭キレそう!辰巳くん!!ってなりました!単純です。笑

すっごいベッドシーン多かったし、最終回のレストランの真ん中での告白&これ人前でしちゃう?なディープキス。

辰巳っちファンはキュンキュンしっぱなしだったんじゃないんですか??



次、

宮沢綾(中村蒼さん)/福田悠太


これ理由がスゴく適当で申し訳ないんですけど…

この前のダンススクエアの福田くんの衣装がクラッチバック似合うなぁ~って思ってて、たまたまドラマ見てたら宮沢さんがクラッチバック持ってて、これだー!!ってなったんです。

文句、受け付けます。笑

でもなんかまっすぐなところ福田くんに演じてほしいな~

たぶんね、優しすぎるよ!って思うところもあると思うんですよ!
でも私は宮沢さん、すごく魅力的な人だと思うし、私ならたぶん宮沢さん選ぶと思います…笑

仕事もできる、でも想っている人最優先にしてくれる、どこが副社長に劣ってるのか…




次、松崎さんのところ…

ちょっと寄り道してその他行きまーす!


三好優香(木南晴夏さん)/山本亮太(They武道

あの猟奇的な妻は、もうこの人しかいないでしょう。

「こっしーはりょーちゃんのもの!」

そうです、りょーちゃんです。笑

この泥棒猫!とか暴言吐きまくりでしたけど、まあ自分はちゃっかり浮気してたとか?
ほんと越岡さんはなんでこんな女と結婚しとんねん!と変な関西弁が出るほどイライラしてましたが。笑

最後、なんか怖かったですよね…私は震えが止まらなかったです。笑

私はこの人の魅力的なところがわからなかったから、まあやまりょちゃんにするのは申し訳ないけど、副社長にそれほどまでに執着する気持ちがこの人の長所だったんですかね…
ちょっと私はわかんなかったですね…



と、ではここで、待ちに待った最後行きたいのですが…

実は2パターンあります!選べなかった…!



では、パターンAどうぞ!

山下陽太(高橋光臣さん)/松崎祐介


元彼です。結婚したら働かないでくれっていうことが一番の原因で別れてしまったふたり。
なんか松崎さんも、働かなくていいって、俺が一生面倒見るから。みたいなこと言いそうだなぁ…と少し想像、
いや妄想してました。笑

まあ、最初は怖かったですけど、ちょっとずついい人になっていったかな~なんて思います。

あの女は危険だ。なんてちょっと守ってくれそうなところ、ちょっと好きでしたねー!



じゃあ、次パターンBで!

ナオキ(GENKINGさん)/松崎祐介


これは1割マジ9割ウケ狙いです。笑

愚痴とか言いたいわ~相談のってほしいわ~とか言いながら。笑

これだけ濃いキャラできるのはたぶん松崎さんしかいないです。

最後、ナオキさんはシェアハウス入ってくるじゃないですか?
家帰ったら、松崎さんがいるんですよ?一緒に男の愚痴言いながら飲んでくれるかもですよ…?

ごめんなさい、書きながらこの時の松崎さんは松崎さんじゃなくて…とかわけわかんないことになりました。

とにかく!まあ面白そう。笑




ってことなので、せいせいするほど愛してるは昨日で終わっちゃいましたが、また見直す機会があったらぜひともふぉ~ゆ~の4人に当てはめて読んでみてはどうでしょうか?



最後にこれはフィクションらしいです。

そして、福田くんの宮沢さん以外の文句は受け付けません。笑

(嘘です。ご意見お待ちしております。)

辰巳先輩④

「じゃあ俺、踊りまーす!」


クラスメイトのもろが今、旬の女性アイドルのヒットソングをゴリゴリに踊り始める。

途端に盛り上がりを見せる会場。



「すごいね~」

「ね~」

ドリンクをちびちび飲みながら、親友と二人で端の方で他人事のように見ていた。



諸星~お前なんでこんなの踊れんだよ~

「いやー!サッカー部のさ、先輩たちの引退祝いにやって!」

チク。


「すっげえ笑いに厳しい先輩がいたんだよ、顔はちょーイケメンなのにさ。」

チクチク。


それって辰巳先輩のこと~?

って言うまわりの子。

チク。チク。チクチクチクチク。


「ちょっ、○○!?」

耐えられなくなって、私が立ち上がったのと隣の子が興奮してドリンクを持った手を私の方に突き出してきたのが同時で。

私の白いトップスは、ブドウ色に染まって、あちゃー…


「ちょっと拭くものもらってこよ!」って親友が連れ出してくれた。


「大丈夫…?」

「ダメ…泣く…」

「帰ろっか?ちょっと荷物取ってくるわ。」


ツイてないなぁ、それはやっぱり次のツイてないことを呼ぶもので。


「嘘でしょ…」

廊下で親友が帰ってくるの待っていたら、前から何人かと一緒に歩いてくる辰巳先輩。


「○○、帰るよ。
えっ、辰巳先輩!?」


「えっ。…あぁ!○○ちゃん、久しぶり!元気だった??」


ってどうしたの!?ホラーみたいだよ!?笑


って先輩は笑ってくれるけど、それどころじゃなくて。


「あっ!ちょっと待ってて!」

辰巳先輩が突然、羽織っていたシャツを脱ぎ出すから、ただでさえいつもよりはやく動いていた心臓がさらに速くなる。

「これ持って帰んな?」

「えっ?」


「ほら、腕にかけたらちょっとは隠れるでしょ?」


「…」


さっきから黙り込んで何も言わない私にいつもとは違う視線を向ける先輩。

お願いだから、先輩もう帰らせて。
これ以上みじめな目にはあいたくないの。


親友が察知してか

「○○、帰るよ。辰巳先輩、失礼します。」

って言って、帰れるって思ったのに。



「ごめん、お友だちちゃん?ちょっとさ、○○ちゃん借りてもいいかな…?絶対なんにもしない!約束するから。」

「へっ?」


「…わかりました。よろしくお願いします。」

「は?何言ってんの」

言っておいで。って口パクしてきた親友。
冗談じゃないんだ、大まじなんだ…。

「とりあえず、出よう。」


辰巳先輩とカラオケを抜ける。2時間前ここに来たとき、いやつい10分前まで考えられなかった展開…。



「何がいい?」

少し離れた公園の自販機の前でそう私に聞いてきた先輩。

「いえ、大丈夫です。」


「そういうと思った。んじゃあ、これね。」

って渡されたのは、カルピスのビッグサイズの缶で。

何も言えないし、出来もしない私。

「…やっぱりね。」

トーンを落としてそう言った辰巳先輩の声に思わず顔をあげる。

「っ!」

辰巳先輩はずっとこっちを見ていたんだと気づいて、動けなくなる。


「あの日、音楽室の前にいたの○○ちゃんだよね。」


これ落ちてたの見つけたとき、○○ちゃんよく飲んでたなぁって。

辰巳先輩が付け加える。


「なんとなくそんな気はしてたんだ。けど、どっちかって言うと、○○ちゃんであってほしいっていう願望の方が大きかった。
○○ちゃんなら、俺のこと否定しないでくれるだろうなぁっていう俺の願望。」


ダメだ…辰巳先輩の顔から、いや実際にはあの瞳から、目が離せない。


「俺、先生のこと好きなんだ。」

あぁ、辰巳先輩のこんな顔、私は見たことないなぁ。

あんまり見たくないのに目を逸らす事が出来ない。

「…でも、先生には婚約者がいる。」


え?

先に目を逸らしたのは辰巳先輩だった。


「俺、絶対報われない恋してんの。」


バカだよね~って言う辰巳先輩。


「辰巳先輩…。」

「ごめんね。」



このごめんねは、こんなこと知らせてしまってのごめんね?

それとも…


「こんな俺でごめんね。」

こんな俺を好きになってくれてのごめんね…?




親友には悪いけど、出来るわけなかった。見返りを求めてない恋をしてる人に告白なんて。


先輩が思ってるほど私はそんないい子じゃない。

けど…

先輩が悲しまないためなら、私は辰巳先輩がいい子って思う私を続ける。

それくらい、辰巳先輩が中心になっていた。


「辰巳先輩らしいなって思います。」


「私は…辰巳先輩のこと全然知らないんですけど…全然おかしいとは思いません。」


「…そんなに人を愛せるなんて…素敵です。」




「帰ろっか。」

どれくらいそうしてただろう。

さっき言ってる途中から辰巳先輩の顔を見れなくなっていた。

辰巳先輩にそう言われて、来た道を帰る。

行きと違い、ずっと沈黙。

背中しか見えない辰巳先輩は何を考えてるのかもわからない。

これが今の私と先輩の距離かと嫌でも知らされる。


辰巳先輩が中に入っていって、店の前で待っていてくれた親友の顔を見た瞬間、自然と涙が出てきた。




これでほんとのほんとに終わりなんだ。

「辰巳先輩…大好きでした…。」


そう言って、先輩に借りたシャツに顔を埋める。


その日はまだ8月だということが嘘みたいに涼しい、空が高い夜だった。

BAD BOYS~ナンコーのヤンキー~②

それからも時々、ふらっと宮舘さんは来た。
もちろん後ろにはダルそうな渡辺さんを連れて。


「おっ!期間限定~!」

「そうなんですよ!今月だけなんですよ?」

「なら、これ買わない手はないよね。」

「お買い上げありがとうございます!」

女子みたいだなんて思いながら宮舘さんを見る。

ん?ってすっごくイケメンな顔してる。
けど、この人も立派なナンコー生。

開襟シャツの胸ポケットのところに刺繍された校章がその証。


そしてその後ろで居心地悪そうにスマホいじってる怖そうなお兄さん(正確には怖いことでめちゃくちゃ有名らしいお兄さん)渡辺さんも立派なナンコー生。


「涼太、先行ってるからな。」

「はいはい。」

だったら、ひとりで帰ればいいのにね。ってこそっと私に言ってきた宮舘さん。
ほんとにこのふたりは仲がいい。


「ありがとう。また来るね。」

と宮舘さんが帰ると入れ違いに奥さんが奥からやって来る。

「ちょっと○○ちゃん!今の子誰よ!彼氏!?」

「え!?ち、違いますよ!!」

「ほんとに~??」

「彼氏出来たら一番に奥さんに言いますって!」

そう言ったら納得したのか戻っていった奥さん。
なにやら店長である旦那さんと出会ったのが高校生の時らしく、高校生なら絶対恋してると思い込んでる節があるらしい。
まあ、いい人なんだけどね。






「え?待って。花屋ってあの向かいの?」

「そう。」

親友を励まそうと呼んだのに、彼女は思っていたよりも平気そうだった。

「向かいだから何度か話したことはあるよ?」

「…へぇ。」

「いい人そうだよね。」

なんとなくだけど、いいことがあったのかなって思ったから、大事な親友だしうまくいけばいいなって思った。






「そんなもんでしょ?初恋の憧れの先輩と結ばれるやつなんてほんの一握りだよ。次の恋応援したんな。」


親友の大失恋の話をした。越岡先生にこんなこと言いたくなかったけど、それくらい私もどうしたらいいか迷ってたから。

辛辣なこと言うのは変わらないけど、いつもだったらこんなこと無視しそうなのにちゃんと答えてくれるなんて、機嫌でもいいのかな?

「そんな惚れた腫れたで人生狂わせるなんて…ね。」


あぁ違う。すっごく機嫌悪いんだ。
やっぱりこの人に言ったのは間違いだった…

そのときの先生の顔は今まで見たことないくらい冷たくてなにか怒っているような顔だった。





その日の帰り、私はなにか悪いことでもしただろうか。

道を歩いてたら、急に怖そうなお兄さんが前に出てきて止まれずぶつかる。
そしたら案の定、怒鳴られる。身に覚えのない画面の割れたスマホまで目の前に出される。

いや、絶対言いがかりでしょ。



「…あの!」

逆になんだか吹っ切れて言い返してやろうかと思ったら、目の前に誰か立った。



「なにやってるんだよ。」


「渡辺さん…」


私に言われてるのか、それともめちゃくちゃなこと言ってるお兄さんにかわからなかったけど、条件反射でごめんなさいって言葉が小さいかったけど素直に漏れた。
それくらい、今の彼は怖い。


「なにやってるんだよ。あぁ"?」




「大丈夫か。」

またもや信じられない現場に立ち会った私は気が抜けて座り込んでしまった。

「ありがとうございます…」


「あんたはいっつも絡まれてばっかだな。」

「…は、はぁ。」

「そこは否定するところだから。」

渡辺さんと話したことほとんどないからどうしていいかわからない。

「なにやってるんだよ、早く」

私が??ってなってると、

「あんたの家どっち?家まで送るっつってんの」


「そんな滅相もない!!」

思いの外、大きな声が出て、声を出した私自身はもちろん、渡辺さんもポカンとしている。



「…はははっ!!!」

突然、渡辺さんが大笑いし始めた。


「あんた、ちゃんと出来るじゃん。」

「え?」

「やりたくないこととか気にくわないこととかあってもノーって言えないかわいそうな子だと思ったからよ。」


ホテル行こうぜって言ってもついてきそうだなって思ってた。笑

って渡辺さんが言うから、慌てて否定する。

「ごめんごめんって。
涼太が怒るもんな。」


?なんで??なんで宮舘さんが怒るんだろ??

って考えてたけどわからない。

そしたら、なんで宮舘さん…?って声に出てたみたいで、

「なんでって…そりゃ、あんたが…。
まあ、いいわ。ほら、早く来いよ。」

そそくさと歩いていってしまう渡辺さん。

「ちょっと待ってください!渡辺さん!!」



「でけぇ声出すなよ!目立つだろうが!」

「いやいや!今までもっと目立つことしてましたよね!?」


今まで、いやついさっきまで怖い人って印象しかなかった渡辺さんは、実は意外と話してくれるし、冗談も言ってくれる人だってわかった。


「そもそもあんたは隙がありすぎるんだよ。」

「一般人はこんなもんなんです!渡辺さんが自己防衛能力に長けていすぎるだけです!」

「いーや!あんたが足りないんだよ。もっと自覚を持ちなさい。」

「…なんかお父さんみたい。」

「は!?…はいはい、悪かったですね。どうせ涼太の方がいいんですよねー」

「あっ、拗ねたー!」

「拗ねてねーから!!」






でもそんなこと言ったって、彼は正真正銘、ナンコーのトップだ。


「なあ、あの女連れナンコーの渡辺じゃね?」

「あぁ。…ってあの子俺知ってるわ。」

「へぇ。面白いことになりそうだ。」 




だな。

『りょーた』

BAD BOYS~ナンコーのヤンキー~

毎週火曜日、時間はだいたいいつも18時頃

イケメンさんは来てくれる。


そして…




「こんばんは、今日はこれにします。」

「ありがとうございます。いつものはいいんですか?」

「だってこれ、新作でしょ?」

「はい、そうなんです。
また、ご意見聞かせてくださいね?」

「出来るだけ早く伝えたいからさ、

ね?連絡先教えて。」


「…え?えー!!?!」





「…せん、すみません!」

「っは!失礼しました。お買い上げありがとうございました!」



あんな会話できたらいいなぁと思いながら、出来るはずもなく。

お兄さんが来るたび、頭の中で自分の都合のいいように妄想する日々。



「今日はあのタルトにしよ。」

お兄さんが買ってくれたものと同じものもらって帰ることにする。

それくらいがちょうどいいんだよ、きっと。

そう思い込ますためにも。





「あー!!宿題やってない…」

宿題?今日はなかったけど。って教えてくれる友だちに塾のねって返す。


しかも今日英語なんだよね…

見た目ほわっとしてて優しそうなのに厳しいんだよね、先生。



「ねぇねぇ!女子はどう思う?」

田中が聞いてくるけど、正直考えて答える時間がない。


「いいと思う。以上。」

「え!?○○ちゃん、酷くない!?」

「ごめんごめん、今時間ないんだよね。でも田中くんの意見いいと思うよ。文化委員さん、頑張ってよ。」





「なんでこうなったのかな。」


例の優しそうなのに厳しい先生に問われる。

「えっーとですね、ここにhaveがあるから仮定法過去に。」

「うんうん、なるほどね…
でもさ、文章読んでみて。『もし彼がアドバイスをくれなかったら、私は…』ほら。」

「あっnowがある。…現在の話だ!」

「うん。」




「先生ってなんで先生になろうと思ったんですか?」


「さぁね、忘れた。」

「でも教師になろうと思ったことはないんですよね。」

「あんな面倒なガキと親と加えて教師も相手にするなんて考えただけでもあり得ないね。」

「…私もその面倒なガキですけどね。」

「そうだね。」


そこは否定してよ!と内心思いながらまた取りかかる。



「先生、面倒なガキだからまた聞きますけど、彼女いないんですか?」

って聞くと、いつものように笑いながら首をかしげるだけだった。


この人は謎だ。

本当に、越岡先生は謎だ。





次の土曜日、その日はバイトの日だった。



今日は土曜ということもあって、閉店間際にお客さんが来て、帰るのが少し遅くなってしまった。

ドラマ間に合うかなって少しだけ急いでた。

地上に出る階段の前に人がいるけど、あそこをすり抜けなければ帰れない

すいません、すいませんと言いながら上がっていく。

最後の一段に足をかけようとしたとき、


「痛ッ!!」
「うわぁ!!」

大声で話していたグループのひとりが振り向いて、お兄さんの体が見事に私にヒットした。


片足で立っていた私がお兄さんとぶつかって、耐えれるはずもなく

重心が後ろに動いたのがわかった。


人間というものは、こういうときになぜか冷静になれる。

あぁ、この階段踊り場まで24段だったなとか。

意外と落ちるのって遅いんだな、って。



だが、いつまでたっても痛みはこない。

え?と思って、後ろを向くと、誰かが背中を支えてくれていた。

「大丈夫?怪我ない?」

うわぁ、このお兄さん眉がキリッとしてる、かっこいい…

じゃなくて!


「あっ、はい。」

「そ、ならよかったよかった!」




「おい。」

一瞬私に言われたんだと思って、全身に震えが走ったのがわかったほど、凄みを含んだ声。

どうやら後ろにいた人が注意してくれてるらしい。



「お前ら邪魔なんだよ。」


「…は!?ぶつかられたの俺!むしろ被害者!」


「あーぁ、始まっちゃった。

ごめんね、ちょっと待っててね」

ってさっきのお兄さんが、私の体をまっすぐに戻してくれながら言った。


「聞こえなかったのかよ、どけよ。」

「ってゆうかお前誰だよ!なんで俺が」

おい、こいつ俺なんか見覚えあんだけど。

って聞こえた声に、答えるように



「俺?俺は渡辺。

"ナンコー"の渡辺って言ったら、伝わる?」



え?ナンコー??


南高って言ったら、いわゆるヤンキー校。

嘘、私、ナンコーの人と関わってるの!?



「お前らのせいで人ひとり死んでたかも知れねぇんだよ。

わかったならどけ。

わかんねぇなら…」






「ちょっとやりすぎなんじゃないの?ひとり、忘れ物しちゃってるじゃん。笑」

って、置き去りにされたバックを拾いあげながら助けてくれたお兄さんがもうひとりの怖いお兄さんに向かって言う。


「知らねー

涼太、帰るぞー」


「はいはい。

あっ、君も気を付けて帰るんだよ。」

ってお兄さんが振り向いて言ってくれる。

「あ、あの!助けていただきありがとうございました!」



「いえいえ。

…ねえ、

なんか君美味しそうな匂いがする。」




「え!?!?」

「何言ってるんだよ、お前…」

渡辺さん?って人も呆れてる。



あっ、もしかして…

「もしかしてタルトの匂いですかね?」

「あっ!そうかも!いいなぁ…美味しそう。」


「あのよかったらどうぞ!お礼にもなりませんが…」


「え!いいの!ありがとう!!
でも君これ食べたくて買ったんだよね?」


「いや!私ここで働いてて、もらっただけですから気にしないで下さい!」

「え!?ほんとに!!ありがとう!」



涼太さんも南高なのかな?

これまでは怖いってイメージしかなかったけど、見ず知らずの私のこと助けてくれて人は見かけで判断しちゃダメだなって思った。

なんだかこの事は誰にも言いたくない秘密にしておきたくて、いつもならなんでも話すお母さんにも黙っておくことにした。


あと、渡辺さんって人にもちゃんとお礼したかったな。




そんな後悔もすぐなくなることになる。

「いらっしゃいませ。

…あ!」


「こんにちは、来ちゃった。」


涼太さんと渡辺さん。

「この前はありがとうございました。」

「いいってそれは。この前のタルトでチャラ。

それより今日は客として来たんだよ。この前の美味しかったから。」

「ありがとうございます!」


涼太さんは、名字が宮舘さんで、自分が甘党で趣味がカフェ巡りだということを教えてくれた。

「で、君の名前は?」

あれ?名札してなかったっけ?っと自分の胸元見ながら言う。

「○○(名字)ですけど。」

あれやっぱりちゃんと名札してるじゃん。


「じゃなくて、名前の方。」


「え!?な、名前…?」

そうというようににこにこしてる宮舘さん。


「…○○です。」


「○○ちゃん、また来るね。」


そう言って宮舘さんは帰っていった。

唖然としたまま見送ってたら、渡辺さんが振り返ったから、ありがとうございました!って頭を下げる。


なんとなくだけど、宮舘さんがスイーツ好きな王子で、渡辺さんがそれを呆れながらも付き合う宮舘さんのSPって感じだなぁと思った。



「あっ!今日火曜日だ!」

またイケメンに会えるなんて、最近の私はツイてる!


そんな風にしか考えてなかった。

辰巳先輩③

「どうしたの。この世の終わりみたいな顔してるけど。」


母にこんなこと言われても何も言い返せないくらい私はどん底の状態でいた。

夏休みなのに家のなかで、寝てるかぼーとしてるかしかしていない。

そんな日々が10日ほどたったある日、スマホを見ると親友からメッセージが来てた。


>夏休みしてるー?
うちのバイト先おいでよー私奢ってあげるから!


今日暇だし行こうかな。


親友のバイト先は、駅の近くのケーキ屋さん。


ちょうど帰宅の時間と被って、人だらけの駅前。

店の前まで来たけど、とても忙しそうに働いてる。

もうちょっとしてから行こうかなって思って時間潰そうと駅の方に向いたとき、見つけてしまった。


辰巳先輩…。


そうだよね、部活あったらこれくらいの時間になるよね…

こっちに来る…?
だけど、足が動かない。


そんな私を動かしたのは、空から落ちてきた雨粒で。

こっちに向かってきていたはずの辰巳先輩の姿が目の前から消えたから引き返したか近くで雨宿りしてるのだろう。

はじめは1滴2滴だった服に落ちた跡もみるみるうちに数えきれないほどになる。





「お嬢さん、よかったらうちで雨宿りして行きません?」


そんな状態の私に声を掛けて来てくれたのは、残念ながら辰巳先輩でもイケメンの王子様でもなくて、店の前に私が突っ立って邪魔をしてた花屋の店員さんだった。



少々強引に屋根の下に連れていかれる。

そっかこんなところにいたら、お客さんの邪魔だもんね、何やってんだ私。


「ごめんなさい、お店のご迷惑でしたよね。」

「そんなことないですよ。こっちこそお節介でしたよね。…ちょっと待ってて下さいね。」


いれてもらった軒下にはいろんなお花、主に植木鉢に植えられたお花が置いてあって。

これはなんていうお花なんだろう…


「よかったらこれ、使って下さい。」

店員さんは私に真っ白なタオルを手渡した。


「どうしました…?あっ。」

「いや!その…」

私の視線の先に気づくと、

「この花はね…」


店員さんは私にいろんなことを教えてくれた。

「そうこう話してるうちにやんできましたよ。」

それはそれは綺麗な夕焼け空に変わっていた。

「また来てくださいね。」



そう言って見送られた道は、先ほどまで辰巳先輩を見つけて動けなくなっていた道と同じだとは思えないほど、色を変えていた。



そう言えば、お店の名前…


「フラワーショップ林…」



親友のバイトしてる店の前から見上げたグリーンの看板には、白い文字でそう掲げられていた。





「なんだ、意外と元気じゃん。」

二人でケーキをつつきながら世間話をしていると急にぶっこまれる。


「そ、そう見える?」

「あのとき、見つけた孝良くんが電話してきたときはビビったわ~

○○、いたけど、動けないから熱中症で倒れたってことにして保健室連れてくわ。
って。」


まあ、あのときはやつにもお世話になった。

お礼にプールの割引券あげたら、兄ちゃんと行こ~って自慢されたけど。




「夏休みは今年の夏で終わりなんだよ!来年なんてあってないようなもんなんだから!
ってことで、来週クラスの打ち上げあるから来ること!いいね?」

って勝手に決めて行った我が親友。


でもそれくらい強引にしてもらわないと家から出る気にならない。

それくらい、その頃の私は弱かった。






~~~~

めっちゃ今さらですが、Twitter始めました。
ここのアカウントと似てて、アイコンがほぼ一緒なので結構すぐわかるかと。